火曜日に行われた全日本プロレス・両国大会の感想とまとめです。
武藤敬司「切り札がちょっとさびついていただけだよ。」
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武藤敗れる……秋山、怒涛の猛攻で三冠V3 大森組が世界タッグ奪還、永田は金網流血戦を完勝 [ スポーツナビ|格闘技|速報 ]
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"最後の砦"武藤をも倒した秋山に包囲網!奴等が世界タッグをワイルドにゲット!アジアタッグを防衛した関本&岡林がCC出場をアピール [ バトル・ニュース ]
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3.20 全日本プロレス・両国国技館大会、速報まとめ~三冠選手権:秋山準vs武藤敬司 | ブラックアイ2
■3.20 全日本プロレス / 東京・両国国技館(9000人・満員)
▼第1試合
KAI、大和ヒロシ、Gillette(12分10秒 シューティングスタープレス→片)カズ・ハヤシ、田中稔、●雷陣明
・雷神組:試合後コメント
ハヤシ&田中は惨敗の雷陣に「騙された」と呆れて退席。
雷陣「デカい事ばかり言ってこのザマです。ハヤシさんや稔さんに何を言われても仕方がないです。すいませんでした。自分、もう少しカナダで修行をやり直してきます。全日本のジュニアのレベルは自分が思っていたより全然上だったっていうのを今日気付かされたんで、もう一回カナダに帰ってやり直してきます。すいませんでした」
▼第2試合
浜亮太、太陽ケア、曙、渕正信(7分39秒 ランニング・ボディプレス→体)KENSO、西村修、吉江豊、●中之上靖文
▼第3試合
○SUGI(4分50秒 スワンダイブ式ドラゴンラナ)●RONIN
・SUGI:試合後コメント「(金網の枠は?)すごく気になりました。でもそれはプロとしての試練なのかなと思い、何事もなく試合ができたので良かったのではないかと」
▼第4試合 アジアタッグ選手権
○関本大介、岡林裕二(19分13秒 ジャーマン・スープレックス・ホールド)諏訪魔、●征矢匠
※王者・関本&岡林がV4
・関本&岡林:試合後コメント
関本(用意された祝杯用のビールを見て)「ビールがある。こんなの初めてだ(微笑)。ありがとうございました、乾杯!」
岡林「うまい!」
関本「苦い(笑)!」
(中略)
関本「(諏訪魔越が当面の目標ですか?)そうですね。同じくくらいの歳でプロレス界を引っ張ってますから。やはりね、ボクも体は小さいですけどやってやるって。この世界でひと旗挙げてやるっていう気持ちでプロレス界に入ったんで。必ずひと旗挙げたいと思います」
▼第5試合 世界ジュニアヘビー級選手権
○ケニー・オメガ(21分1秒 片翼の天使→片)●近藤修司
※王者・ケニーがV4
・ケニー:試合後コメント)「今日はですね、DDTから誰もいなくてチョーさびしかった。でも一人で勝ちましたね。一人だけでも一番強い。このまま続きます。リーグ戦でもこれから試合は全部勝ちます」
・ケニー「(KAIの挑戦は?) いや絶対無理と思う。本当に興味はない。全然ない。もう2回試合をした。日本にいっぱいいい選手はいる。だから2回はマックスだと思う。だから違う選手と試合がしたい。でももっと強くなったら考えます(笑)」
・ケニーはマイク・コメント共に全て日本語で話した。
▼第6試合 金網デスマッチ
○永田裕志(18分44秒 バックドロップ→KO)●河野真幸
・永田裕志:試合後コメント「全ての価値観、ファンや選手の価値観、そして選手が強くなる。オレが参戦する事で全ての世界が変わる。オレなんかに変えさせていいのなら(笑)、それもアリかなと思います。新日本プロレスも何かと忙しいけどさ、残り少ない現役生活だからさ。いや長いかな(笑)。でもオレの余りあるエネルギーを吐き出すリングがここにあるならば、オレの力で全ての価値観を変えてやろうと、ファンが変わってるもの。河野が変わってるもの。そしてセコンドに付いている向こうの選手たち、そしてオレに付いてきた選手たち。何かが変わってる。そうなったらさ、自分の手で何かを大きく変えたいと思うのがレスラーじゃないですか。条件が合えばこの体全てを差し出しますよ。この体、叩き壊せるなら壊してみろ」
▼第7試合
○小島聡(14分8秒 ラライアット→体)●真田聖也
・小島聡:試合後コメント「今のオレの居場所じゃないのかなっていう気はすごくした。でもそれが正常な姿であって、オレが今日このリングに立った事になんの違和感もなかったら、逆におかしいと思う。確かに2004年の夏に、亡くなられた三沢光晴さんに対戦表明した時と、今日のオレが一瞬リンクしたような気がしたんだけど、リングに上がってみてそれは違うんだなぁと思いました。やっぱり三沢さんみたいなスーパースターじゃないとああいう状況で違うリングに上がっても声援は来ないんだなってすごい思ったし、今日上がってみて複雑な声が聞こえてきたんで。それは全てはっきりと耳に入ってきたんで、そういうのも踏まえた上で現状の小島聡だったんだなぁって思っています」
▼第8試合=セミ 世界タッグ選手権
○大森隆男、征矢学(16分40秒 アックスボンバー→片)ダーク・オズ、●ダーク・クエルボ
※挑戦者・大森&征矢が王座奪取(第61代)。
・大森&征矢:試合後コメント
征矢「オレ“たち”じゃないかも知れない。大森さん! 全日本に入って三冠に挑戦しましたけれど、負けてしまった。オレも悔しかったですよ」
大森「オレが負ける前にお前がアジアタッグで負けてるだろう! ここでよぉ! そもそもはそこから始まってるんだよ!」
征矢「でもね、大森さん。GET WILDは両国から始まってるんですよ。これからが本当のスタートだ!」
大森「オレたち、今日ここでベルトを獲り返した事で、ちょっとはワイルドに近づいたのかなぁ。ちょっとはワイルドらしくなったのか? ちょっとはワイルドをかじったのか?」
征矢「それはオレたちが決める事じゃあないでしょう。見てるみんなが決める事だろう」
大森「もっともだ」
(中略)
征矢「大森さん、今日はあなたが全日本に入団してくれたからこそ、そしてオレが大森さんとタッグを組んだから、今日こうしてベルトを獲れたんですよ。オレはそう思っています。今日のあんたがMVPだ。(大森を指差しながら)今日のあんたはワイルドだよ」
大森「人を指差すな。人を指差す時はオレはいつもなんて言ってるんだ。手を添えろと言ってるだろう」
征矢「でもね、大森さん。オレたちまだまだワイルド不足ですよ」
大森「まだまだ足りないな。今日の相手チーム、メキシコ組に相当てこずった。オレたちのワイルドが十分に満たされていたなら、あのままガッチリ獲れたはずだ。でもあそこで救出に入ってくれた。十分にワイルドを感じたぜ」
征矢「この首が折れても、大森さんと……大森さんとベルトが獲りたかったんですよ!」
大森「オレも同じ気持ちだ。お前とベルトが獲りたかったんだ。お前しかパートナーはいないんだ」
征矢「これからもお願いしますよ!」
大森「こちらこそ。ガッチリ行こうぜ」
征矢「ワイルドに……行こうぜ!」
大森「ワイルドに行くぜ!」
▼第9試合=メイン 三冠ヘビー級選手権
○秋山準(18分21秒 スターネストダスト)● 武藤敬司
※王者・秋山がV3
・試合後、全日本プロレス勢がリングを囲む。
・秋山「おまえら、いっぱい来やがって、このヤロー。だけど、横綱、来てくれてありがとう。でもな、おまえら、チャンピオンカーニバルで上がって来い。オレはノアのグローバル・タッグリーグ戦に出ないといけないんだよ。……KENSO、おまえは違うだろ。ほかのメンツ、しっかり勝って来い。待ってるぞ!」
・KENSO「しゃべってもいいですか! 僕は必ず、三冠チャンピオンのベルトを全日本に取り戻す。いいですか! あそこにいるノアのバカヤローのファンに、腹の底から思い切り、ビチッ!と、『ゼンニッポン、イヤーッ!』を決めたいと思います」
・武藤敬司:試合後コメント「もうオレを追いかけたってしょうがないだろう。時は動いているからな。オレのコメント取ったってしょうがねぇよ、もう。切り札がちょっとさびついていただけだよ。また磨けばいいって事だけだ」
・秋山準・試合後コメントは別枠で。
メインの秋山vs武藤は名勝負。ベテラン同士の闘いながら、じっくりとした攻防は少なめ、と言うか秋山がそれをさせなかった。
武藤が技を放ったあとの“独特な間”をできる限りカット。すぐ攻撃に移しペースを与えず。
武藤敬司が武藤敬司の試合をできていない。1・4の内藤哲也戦を見ている者なら、そうさせている秋山の凄さと覚悟は分かるはず。
捨て身で放ったムーンサルトですらフロント・ネックロックで切り返される。
思うように闘えず、コンディションも悪い武藤は苛立ちを隠せない。しかし終盤に奇跡のタイミングでフランケンシュタイナーを放つ。これは震えた。両国にいた誰もが声を上げたはず。
凄い試合だった。
秋山選手の試合後コメントがひじょうに興味深い。
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――防衛おめでとうございます。「このリングに来たからには武藤選手の首は獲りたい」とおっしゃっていましたが、それを達成した今のお気持ちはいかがでしょう?
秋山「嬉しさとさみしさと……2つですね。」
――さみしさというのは?
秋山「いや武藤敬司の全ては全然超えていないですけど、取り合えず勝負に勝ったという事で……。でもまぁ、あの状況でよくあそこまで動けるなというのはすごいとは思いますけど、勝ってしまったんで若干のさみしさは感じます」
――2日前にはタッグマッチで対戦していたのですが、その時と比べていかがでしょう?
秋山「そりゃまぁ、シングルマッチとは全然違うと思いますけどね。もちろん全日本プロレスのベルトですから余計に力も入っていたと思いますし」
――ノアの再活性化にこのベルトは必要とおっしゃっていたのですが?
秋山「こうやって皆さんに話を聞いてもらうのも、ベルトがあった方がより声は聞いてもらえると思うんで、取り合えずTVとかない状況でノアという名前を前に出していこうと思ったら、これが一番手っ取り早い。よく『中で中で』と言うけれど、中でやってるからダメなんだ。中でやってるから名前が表に出ない。そこをよく考えないと。外でやって、外に発信していかないとノアという名前は出ないし、中で活性化と言ってもこういう状況では無理です。ちょうどノアが始まった時もこういう状況だったし。もしかしたら、ノアが始まった時よりももっと悪いかも分からないです。だからもっと外に外にいろんなところで発信していかないといけないと思うし、そういった意味ではこれ(三冠のベルト)が材料になると思います」
――試合について振り返っていただきたいのですが、武藤選手が序盤からスパートをかけてきましたが、これは秋山選手にとって意外だったのではないでしょうか?
秋山「最初からあんな風に動いてくるとは思っていなかったですよ。最初だいたいゆっくりなんで。それをボクがそうさせないようにしたんですけど、それでも正直(武藤は)付いてこれないだろうなと思っていたんです。だけど、そういう一瞬の切り返しというのはたいしたものだと思うし……ボクがたいしたものなんて失礼な事は言えないけれど(苦笑)、すごいなと思いますよ」
――ム-ンサルトプレスを受けたすぐ後のフロントネックロックは狙っていた動きだったのでしょうか?
秋山「『ALL TOGETHER』の時にやられながらそう思いました。やられながら『余力があればこれは行けるな』と思いました。あそこが唯一武藤さんが攻撃している時に隙ができるなと」
――終盤のフランケンシュタイナーには秋山選手も驚かれたのではないかと思うのですが?
秋山「そうですね。あのヒザであそこまで飛べるとは思わない。わかんないですね、武藤敬司っていう人は。ヒザは普段歩いてる時も引きずっているけどリングではあそこまで飛べるし。よくわかんないです」
――そして試合後には次期挑戦への名乗りを挙げる選手が続々と上がってきましたが?
秋山「チャンピオン・カーニバルがあると思うんで。本来ならボクも……。でも、ウチのグローバルタッグリーグがあるんで出れないですけど、まぁそこで勝った人間とやるのが一番。まぁ、ボクのひとつの山はここで登りきった。でもまた新しい山が、どういう山ができるのか。またすごい山ができたらここで登ろうと思うし、そういう大きい山を作ってもらいたいです」
――上がってきた中で横綱には敬意を見せていましたが、KENSO選手には……
秋山(さえぎるように)「アイツだけはダメです。何度も言うけどアイツだけはダメです」
――試合の話にまた戻りますが、武藤選手はじっくり来ると思っていたそうですが、武藤選手のスタイルに乗ってやろうという気持ちはありましたか?
秋山「いや、ここ何戦かウチのタッグ戦も含めて武藤敬司のペースにずっと乗っていたんで、もういいだろうと。もうオレのペースで行こうと……思って、オレのペースには付いてこれないだろうと思っていましたけれど、付いてこれないどころかちょっと逆転されたところもあって(苦笑)。でも本当にすごいです。全てがすごいです」
――以前「武藤選手には三沢さんに近いものを感じる」とおっしゃっていましたが、実際に戦ってみていかがでしたか?
秋山「ここ何戦か全日本でも戦って……違うのはやぱり熱さです。ボクは外から見ていた時は結構ひょうひょうとして、天才と言われるから熱さっていうのは感じられないと思っていたら、かなり熱いんですよね。タッグマッチでやっててもあんなにリングサイドを歩き回って声をかけるっていうイメージがなかったんで。すごくそういうのは……『この人、熱い人なんだな』って。だからここまで来れたんでしょうけど。だからその辺は少し三沢さんとは違うかなって」
秋山も武藤の異常な粘りに驚いている。ホントに化け物級です。
武藤相手に厳しい攻めを貫いた秋山も立派です。超一流選手同士によるギリギリの攻防でした。
近藤修司の敗戦に落胆、ゲットワイルドの勝利に歓喜
※以下はややプロレスのぶっちゃけた話も書いています。そちら系が嫌いな方は読まないで。
今大会は「ベルト奪還」が大テーマ。バラエティにとんだカードを一括りにまとめ分かりやすく提示できたと思います。ダメな試合もあるにはあったが全体としては成功な大会。
ホントに全日本プロレスには感心する。大胆なストーリーをよくここまで貫いたものだ。
昨年秋の全ベルト他団体流出以来、なかなか結果が出せていないことに加え、他団体頼りの集客に「情けない」との声も多く出ました。しかしそれでも全然前身なんです。これまでの全日本はホントに客席ガラガラ状態。
「全ベルト流出」は、瀬戸際の団体状況をリングに重ね、そこから這い上がる決意をファンに示す壮大なストーリーであります。
他団体のファンへ「全日本」という名前を意識させるべく選手の交流を活発に行った。外へ向け話題を広げる意味もある。
これまでの「対抗戦」や「交流戦」と違う新しいやり方であることが面白い。
また、他団体勢とタイトルマッチを行う中で、過去の対抗戦によく見られた「星の貸し借り」「1勝1敗の法則」というものをほとんど感じさせていないのが興味深い。
今回の世界ジュニア戦、大方の予想は近藤修司の勝利。しかし結果は逆で自分も本当に驚きました。アジアタッグ戦も諏訪魔&匠が同一カード・タイトルマッチの連敗。その前には曙&浜がアジアタッグ選手権で連敗している。プロレスのセオリーとしてあり得ません。
その裏に何があるかと言えば、「勝ち・負け」への興味を重くするということ。
プロレスは結果より内容で評価されることが多いジャンル。敗者が勝者以上の評価を得ることは珍しくありません。また、試合前からある程度の勝敗が見えている場合も多くある。この手の試合を全く否定するつもりはありません。勝敗が見えてるからこそ、レスラーの心情や力量がハッキリ分かる場合もあります。
ただ、勝敗が分かりにくい方が単純に楽しめ、感情移入もしやすいはず。特にライト層はそうでしょう。
今の全日本はライト層だけでなくマニアすら結果が読めないよう仕掛けている。
近藤が負け、河野が負け、真田も負け…と来ると「また全敗か」の想いがよぎる。冷静に見ればそうは予想しないかもしれないが、とにかく近藤の敗戦がインパクトあって頭が働かない。
だからこそゲットワイルドの勝利にはライトもマニアも境無く本気で喜びを爆発できた。ゼンニッポン・コールまで発生した。ちょっと言い過ぎかもしれないが、格闘技の大一番が決着したときに似た興奮あった。とにかく「勝ち」が嬉しいんです。
そして“溜め”があった分だけ喜び倍増。いや、ここまで「負け」を我慢できたのは凄いです。
この興奮は記憶に残る。他のベルトを奪還したときも同じ感動あるのなら…リピーターに繋がらないだろうか。
勝ち負けで喜んだり泣いたりする大会は他にもあるが、ここまで気持ちに落差あるプロレスは最近じゃそうないでしょう。
今の時代にこれをやるのは本当に辛抱がいる。よくぞ決断できたものだと思います。
とにかく最近のファンは(プロレスだけに限りませんが)「結論」や「答え」を先に欲しがる。その日のうちに結果の分かる「一話完結」が喜ばれる。
娯楽が溢れる現代では、そうなってしまうのは仕方が無い。でも本来のプロレスは「連続ドラマ」。
その面白さが体感できる場であってくれれば嬉しいです。
もしかしたら裏に何か事情あってこうなってるのかもしれないが…結果として感動できてるんだからいいんです(笑)。