金網の中から何が見えたのか?〜「船木誠勝vs鈴木みのる」観戦記集
(03/26 全日本プロレス)
試合が素晴らしかった一方で、試合後のコメントに妙な違和感を感じる自分もいます。
十代から続く2人のストーリー、すれ違っていた気持ちは闘うことで再び認め合い…。
そんな単純なものだろうか?
作品を作り上げる中でお互いに心が通じる部分は確かにあったでしょう。そうでなければプロレスはできない。
ただ、それで全てを円く納めるつもりにはならない。
ここまで長年にわたって複雑に絡み合っていた感情が、こんな分かりやすい形で通じ合うってしまうことを、どこか否定してしまいたくなる。
「そこがプロレスの素晴らしさ」と納得できる方もいるだろうが、もうちょっと疑ってかかるのもアリでしょう。
船木は通じ合えたと感じても、鈴木みのるはどうなのか。船木の「やっと次に進める」とのコメントは「もう関わらなくてすむ」という意味にも聞こえる。
試合後に頭を下げたことの重さ。
2人の本音を探る作業はまだ続くように思う。
▼観戦記集▼
では「船木vs鈴木」中心で観戦記を紹介。
引用は一部です。リンク先で全文の確認を。敬称略。
■ 『〜風になれ2〜』にすべての思いを込めて……鈴木、船木よ、ファイナルの向こうへ生きてゆけ! [ kamipro.com | 金沢“GK”克彦のこちらプロレス村役場ドットコム ]
しかし、船木の的確にして強烈な蹴りが上回り、鈴木は前のめりに崩れ落ちた。壮絶だが、スッキリとした結末。四方に礼をした船木は、一旦起き上がりかけたものの再びダウンした鈴木に向かっても一礼。握手はなかったが、この瞬間にも自然な大歓声が起こった。プロレスラー船木誠勝の勝利。試合後、血止めのタオルを額に巻き、インタビュースペースへやって来た船木の表情も明るかった。
「これで先へ進めます。やっぱり昔の鈴木みのるの顔をしていて、彼が俺に訴えたいことを体で教えられた気がします。そういう意味では感謝してます。次に鈴木とリングで会うときは、べつの気持ちで。鈴木のほうは今回の続きと思っても、憎しみでぶつかってもらっても構わない。全部受け止めます。鈴木とはリングのなかで会話していきます」
敗れた鈴木はノーコメントだった、内心ほくそ笑んでいたのではないだろうか? どこか自分自身を冷静に見定めている船木誠勝という男の素を完全に引き出したのだ。これは鈴木みのるにしかできない芸当。前のめりに倒れたのだって、闘いは続くし、プロレスラーはつねに新たなスタートに向かう準備があることを示唆していたようにさえ感じる。
■ 金網の中にいたもうひとりの証言 [ 鈴木健.txt OFFICIAL WEBSITE ]
パンクラス時代に2人が対戦した時に、私はこう書いた憶えがある。「試合後、勝者の船木が鈴木に身を寄せて泣いていた。そのシーンを見た時、鈴木が兄で船木が弟に見えた。プロレスラーのキャリアは船木が上で、1歳違いながら学年は同じであるがゆえに、常に船木の方が兄のように見られていたが、この日はそれが逆転したように思えたのだ」。ところがこの日は、あらゆる関係がいっさい投影されぬほど、それぞれが個になっていた。顔さえも知らぬ相手と闘うならばともかく、あれほど濃密な過去を共有してきた両者がそこまで関係を絶って闘うということ自体が、この決闘は異例だったように思う。だから、大いに語れるのだ。
■ 週刊プロレス・宍倉清則 [ 週プロmobile (shupromobile) on Twitter ]
船木誠勝vs鈴木みのるの金網は、アップが中心のテレビよりも、会場で遠くから見た方がよかった。ひとことで感想を言うと、すべてが「絵」になる。船木選手のミドルキック一つが金網越しに見ると、すごく絵になる。しかも、血が流れているし。
■ 全日本両国大会〜雄弁なノーコメント [ 須山浩継伯爵の身勝手日記 ]
これは大きな自戒と反省も踏まえたうえで書くが、今のプロレスは過剰に選手からのコメントを要求し続け、正解らしきもの(アタシは選手自身が口にしたからといって、それが必ずしも正解とは思わない)を垂れ流し続けた結果、観る側はそれが当たり前のことと考えるようになり、結果としてプロレスというジャンルから考えたり想像したりする楽しみを削り取ってしまったと思っている。
たとえばこの試合が鈴木選手と船木選手との関係に何らかの結果を及ぼすか否かは、これで次期シリーズで両者が対戦するカードが組まれるまで、それぞれのファンがあれこれ想像したり考えることになる。鈴木選手があえて技を解いた理由も同じだ。鈴木選手が敢えてその答えを出さないのならば、それを考え、想像し、友達と語り合うのが本来のプロレスの楽しみ方だと思うのだ。
■ 第77回 それはラブレターにも似>
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